全国銀行協会は、新型コロナウイルスの感染拡大で資金繰りに苦しむ企業に対して、手形や小切手の不渡り処分を当面猶予する特別措置を始めたことを正式発表。通常、約束した期日までに資金を用意できない「不渡り」を出すと企業の信用力は著しく低下、異例の対応で中小企業が一段と苦境に陥るのを防ぎ、再建時の足かせにならないようにすることが目的のようです。
全国での手形の取引額は2019年に約184兆円あり、手形の電子化や振り込みによる支払いの拡大により減少傾向にあるものの、支払いを数カ月先に延ばせる手形は、手元資金が乏しい中小企業にとっては重要な決済手段となっているのが現状です。企業が資金不足に陥り、支払期日までに手形を決済できない不渡りを起こしてしまうと、銀行間で情報が共有され、半年以内に再び不渡りを起こすと、銀行はその企業との取引を停止する仕組みとなっています。この結果、企業は手形を振り出すことができなくなり、事実上の倒産に追い込まれる事例が多いようです。
今回の特別措置では、企業が約束通りに銀行口座に資金を用意できなかった際に、銀行が決済を仲介する手形交換所に対して新型コロナの影響で取引が滞っている旨を報告し、交換所は銀行間で情報共有する不渡り処分を出さないようにするとのことです。全銀協は今回の特別措置を始めるにあたり、各地の手形交換所を運営する地方の銀行協会に通達を出しているとのことです。
今回の措置はあくまで「不渡り」処分を猶予するものであり、手形を渡した先である相手企業への支払い義務は残ることになる。売掛債権を回収できれなければ相手企業の資金繰りが悪化するため、不渡り猶予の措置とあわせて相手企業への資金繰り支援も欠かせないとのことです。このような特別措置は1995年の阪神大震災と2011年の東日本大震災の際に発動しており、東日本大震災では東北3県を中心に発生から半年間で22億円超の不渡り処分が猶予され、全国で経済活動が制約を受けている今回は、より幅広い企業に適用される公算が大きいとみているようです。